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「構造計算書偽装事件の社会的背景と耐震性能のほんと!」
〜21世紀にふさわしい耐震性能のマンションとは?〜 |
9. 最後に(21世紀は「耐震性能」について語れる時代)
構造計算書偽装事件にかかわるマンションの住民の皆さんが、前項で述べたマンション購入時の損得勘定ができる会話を知っていて、購入時に会話が出来ていたなら、こんなに苦悩することもない人生であったかもしれません。
また、同様なことがヒューザーの小嶋進社長にも言えるのではないでしょうか。
少なくともマンション販売業者は「品質の良いものを安く提供する」ことをモットーとして、多くの販売業者は住民が求める付加価値の高いマンションを造ってきました。
そんな中で、もし消費者の損得勘定ができる会話が小嶋社長に伝わっていたり、構造の専門家や設計者を通して耐震性能の正確な情報を聞いていたなら、問題となった性能の低いマンションは造られることもなかったのではないかと思うのです。
問題の根源は、「耐震性能」との言葉が長い間、社会全体だけでなく建設業界においても「死語」となっていたことにあるように思います。
それは、人類が勝ち得た技術が人命を守れても、財産を守るまでに至っておらず、発展途上の段階であったため、多いに語ることが出来なかったゆえんなのかもしれません。
しかし、今の技術を持ってするなら高い性能は可能な時代になっています。
現在、ゴムと鉄板を積み重ねた免震装置は手造りで作られている段階ですが、普及期を迎えて工場のラインに乗り大量生産される日がきたら、構造体全体としても今より安くかつ高い耐震性能の建物が造れることは容易に想像できます。また、制振装置についても同様なことが言えます。
2000年に国土交通省は、新しい時代に向けた性能の高い建物を建てるべく法の改正でその基盤を作りました。その基盤にどう財産を守れる建物を構築するかは民・民の問題としてあずけたわけです。
しかし仏を造ったものの、誰もそこに魂を入れていません。
今回の計算書偽装事件は本書で述べた様々な社会的背景のもとで、必然的に発生した事件ともいえましょう。従ってこの事件を教訓として、ここに魂を入れないならいつ入れることになるのでしょう。
阪神淡路大震災以上の天罰が、再度下らない限り魂が入らないとするなら、あまりにも人間はおろかではないでしょうか?
買うときの責任、買った後の責任、全てが自己責任であると明言されている昨今である以上、豊かな社会、安全な社会とは、消費者一人一人が賢くなり、自ら求めない限り、そのような社会は築けないことを示しています。
消費者の皆さん、そして建築関係者の皆さん、
21世紀にふさわしい建築物を
自らの足で第一歩を踏み出すことから築きませんか。
《完》
長文にもかかわらず、最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
これにより貴重な一歩を踏み出すことになりましたら、幸甚の至りです。
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