偏心杭のある建物での基礎梁設計について
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杭が柱心の直下になく偏心杭となる事例は数多く見受けられます。また、確認申請後にも地中障害物により、さらなる杭心ずれを余儀なくされる場合があります。
今回は、このような偏心杭のプログラム上の取扱いの注意点を示すことと、確認済証交付後に予想外の杭心ずれが生じても、「軽微な修正」で済むように杭心ずれシミュレーション機能を「BUILD.GPIII」に組み込みましたので、併せて説明させていただきます。
基礎梁の設計において極めて重要な話ですので、是非ご一読頂きますようお願い致します。
なお、以下において、「BUILD.一貫IV+」を「一貫IV+」と、「BUILD.GPIII」を「GPIII」と略称で呼びます。
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上部構造は「一貫IV+」で、基礎梁は「GPIII」で断面検定 |
杭のある建物の場合は、基礎梁を含む上部の構造(上部構造)を「一貫IV+」で解析し、基礎梁を含む下部の構造(下部構造)は「GPIII」で解析して検証します。この時、柱・梁・壁等の検定を「一貫IV+」で行いますが、基礎梁の断面検定は、「一貫IV+」の結果を採用しません。
つまり、「一貫IV+」から、基礎梁を格子梁モデルで解析する「GPIII」にデータリンクし、「GPIII」で得られた応力により基礎梁の断面検定を行います。
ここで「一貫IV+」で得られた基礎梁の応力等は、「GPIII」にリンクしてそれを加味した断面検定を「GPIII」で行っています。
上部構造と下部構造に分けて解析するということは、下部構造の応力変化が上部構造に影響が及ばないように設計することを意味し、剛強な基礎梁を設けて杭頭モーメントや杭偏心モーメントを(上部構造に逃がさないで)基礎梁のみで処理する設計方針を立てたことになります。
この設計方法は、杭頭モーメントに対して、一般的には安全側の設計であるために昔からよく採用されています(詳細は後述)。
この度の法令改正で確認済証交付後の設計変更ができなくなったことから、以下の問題等に対処する意味でもこの設計方針は有用になっています。
【設計変更に関わる問題点・注意点】
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杭のある建物は、往々にして偏心杭となりますが、確認済証交付後の施工時にも、施工誤差や、地中障害物によりさらなる杭心ずれを余儀無くされる場合があります。 |
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施工の段階での設計変更が上部構造の応力にまで影響が及ぶと、柱・梁等の大幅な設計変更になり確認申請業務からやり直しになる事態も考えられます。 |
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地盤や杭に関しては不確定要素も少なく無く、事が起こったときの問題が重大となるため、下部構造をより安全側の設計にしておくことが求められています。 |
「GPIII」で計算した杭頭の曲げモーメント等を「一貫IV+」にリンクして再度上部構造の解析をした場合は、次の問題点が発生するため、前項の設計方針を採用した時にはお勧めできません。
上部構造の解析における杭頭曲げモーメントは、基礎梁から柱脚に流れ、柱脚に曲げ戻しを生じさせるため、柱脚の曲げを小さくする傾向に作用することが多く、柱脚と基礎梁を危険側にする傾向にあるからです。
さらに、曲げ戻しの杭頭モーメントが大きすぎると、この問題はより危険側へと導きます。一般的には、杭頭モーメントは杭頭固定で計算しますが、実際の杭頭は完全固定ではないため、杭頭モーメントを大きく見過ぎていることから、柱脚の設計をより危険側にすることにもなります。
ここでの表現は分かり易くする意味で、一般的な傾向をより具体的な表現で示しました。個々の物件で特定の部材に注目すると上記と異なる傾向になる場合があります。
また、まれに剛強な基礎梁を設けない設計や、杭頭モーメントを上部構造に反映させることもありますので、その設計方針を否定するものではありません。いずれにしても地盤や杭に関しては不確定要素も多いため、適切なモデル化のもと充分な注意を払って上部構造の設計をする必要があります。
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施工時の杭心ずれのシミュレーションを一回の計算処理で |
施工誤差による杭の偏心量は、施工するまで明確になりません。そこで施工誤差による偏心パターンを複数指定することができ、一回の計算で複数モデルのシミュレーションを行い最も厳しい条件のもとで基礎梁の設計をする機能が求められていました。
この度、「GPIII」にこの機能を組み入れ、ホームページからダウンロードできるようにしたところです。この機能により、確認申請前に杭心ずれのシミュレーションを行い設計に考慮することができます。後々杭の偏心を余儀なくされた場合でも、OKとなる確率が高まり、設計変更の心配が軽減されるため安心です。
杭心ずれのシミュレーション機能については、次のリンク先を参照して下さい。
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