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■地震動応答解析のおはなし
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第15話 「免震構造の設計は?」


中沢: 「先日の免震構造の話の中で・・・。 免震構造は特殊構造なので、一次設計や二次設計のルートにて設計しなくてもよいと言っていましたね。ということは、何かそれにかわる設計基準があるのですか?」
島課長: 「日本建築学会より『免震構造設計指針』という本が出ているね。かなり分厚い本だけど、一度は目を通しておくことだね。」
中沢: 「はい、わかりました。ところで超高層建物の場合は、レベル1の地震動やレベル2の地震動に対して云々・・・。とありましたが、免震の場合はその辺の話はどうなるんですか?」
島課長: 「もちろん、超高層建物の考え方と同じ視点から構造設計に取り組むことになるね。まずは、この建物をどのようなスタンスで構造設計するのかという、設計クライテリアを決めるんだね。」
中沢: 「ということは、レベル1の地震動に対して建物は許容応力度以下であること、というふうにですか?」
島課長: 「そう、そう・・・。免震構造の場合は、免震層でエネルギーを吸収してしまうので、当然レベル1の地震動に対して、上部構造の地震力は大変小さいね。 阪神大震災のときに、免震構造の建物の応答記録があるんだ。西日本貯金事務計算センターという8階建のビルなんだが、地表面で260ガルの最大加速度が観測されている。通常の建物ならば上層部の応答は、応答倍率が2〜3倍となるので、応答最大加速度は500ガルを超える値となるが、実際に観測された入力値は、8階部分で最大加速度が75ガルなんだ。」
中沢: 「大変小さな応答加速度ですね。このときの地表面での地震波が260ガルとは、だいたいレベル1の地震動と考えていいんですか?」
島課長: 「レベル1の地震動については以前説明したので、加速度の大きさだけでは一概に言えないことはわかると思うが、例えばレベル1の最大加速度が『TOKYO101だと240ガル前後』『OSAKA205だと125ガル前後』『TAFTだと250ガル前後』だね。」
中沢: 「とすると、地表面で260ガルですから、ほぼレベル1に相当する地震波と考えると、上層部を現基準で設計してあるなら完全に許容応力度以下ということですね。十分安全だということは、レベル1での検討は必要ないということになりますね。」
島課長: 「そうとも言えるけど、少し話しが逆なのは、なぜ免震構造にするのかという設計思想が、そこにはなければならないね。免震構造にしたことにより、上部構造への地震力は小さくなるとするなら、それに見合った経済設計をすることもできるわけだから・・・。 」
「そこでまず始めに設計クライテリアを明確にするわけだ。免震構造だから特別なクライテリアがあるわけでなく、例えばレベル1の地震動に対して、『部材の応力度は許容応力度以下にする』とか、また『層間変形角は200分の1以下にする』と言うようにだ。」
中沢: 「なるほど、よくわかってきました。免震構造にした場合は、建物に入る地震力が小さくなる分、かなり小さな断面でもよくなるわけですね。」
島課長: 「以前はベースシャー係数には下限値が決められていて一次設計用地震力の3/4以下にはできなかったね。」
中沢: 「4分の3以下とは、一次設計時のベースシャー係数0.2とすると0.15以下にはできないということですか?」
島課長: 「そのとおりだ。しかし最近の下限値は0.1まで許されてきたね。」
中沢: 「とすると、今まで以上に経済設計できるわけですね。」
島課長: 「さて、そこでだ!再度話しを戻すと・・・。なぜ免震構造にするかだ。 断面を小さくして経済設計するために免震構造にするか、それともより安全で、大地震時でも建物の資産価値が保てるようにそうするのか、と言うようにどのスタンスで始めるかだ。」
中沢: 「話しが2つでてくると混乱するので、先程の続きを述べますと、レベル2の地震動に対しての設計クライテリアは、超高層の場合などは〔建物が崩壊しないこと〕や〔層間変形角は100分の1以下であること〕とありましたが、このようなことで良いのでしょうか。」
島課長: 「自信のなさそうな言い方はまずいが・・・。免震構造といえども、レベル1やレベル2のクライテリアは、超高層のクライテリアと基本的には違いはないと考えてよいね。」
中沢: 「免震構造ですと、建物に作用する地震力は小さくなるので、大地震時でも、ひび割れないような設計法ができると言われましたが、そのように設計したいですね。」
島課長: 「そこだよ、それが構造設計者の設計クライテリアと言うもんだ。 この建物をどう構造設計するか、というスタンスを明確にすることから始まるわけだから、そのような考え方で設計クライテリアを決めても良いわけだ。すなわち、大地震時に建物の全部材を弾性範囲内として設計するとか、またはどのくらい塑性化を許すかということを決めるわけだね。」
中沢: 「建物を全て弾性範囲内として設計する場合は、弾性の振動解析をすれば良いわけですね。」
島課長: 「いやいや違うね。建物は弾性でも、免震層の積層ゴムの挙動は弾塑性の履歴を描くんだ。」
中沢: 「なるほど。ということは免震構造の場合、必ず弾塑性の地震動応答解析をしなければいけないということですね。」
(星 睦廣)


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