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■地震動応答解析のおはなし
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第14話 「免震構造と新時代」


中沢: 「前回の話でレベル1やレベル2の目的を聞いて、高層建物における地震動応答解析の輪郭が少し明確になった気がします。」
島課長: 今までの話しの中にも出てきたように、構造設計をするにあたっては、設計クライテリアという明確なスタンスをもつということは、大変基本的なことなんだ。しかしながら、この辺の訓練を受けている人は少ないね。」
中沢: 「それは、今の設計規準の問題ですか?」
島課長: 「今の設計規準は、悪い建物ができないようにと、その点に重点を置いた規準なんだ。問題というよりは、見てる方向が違うと言うのかな。」
中沢: 「見てる方向?」
島課長: 「すなわち、現規準は構造設計者の判断を求めるというよりは、計算フローや仕様を具体化し、それに従わせるというスタンスなんだ。これにより最低限安全な建物は保証されるわけだ。一方高層建物となると最低限の安全の確保というレベルでなく、よりよい建物を目指すという視点がある。それに照らしあわせながら、構造技術者の判断と責任のもとに、前向きに構造設計を行うということで、この辺の視点の違いはあるね。」
中沢: 「阪神大震災以後、免震構造について注目されはじめてきましたが、免震構造設計を行う場合は、この辺の視点というか目的はどうなっていますか?」
島課長: 「免震構造は、特殊構造なのでよりよい建物を目指した視点で設計しなければならないね。」
中沢: 「特殊構造ということは、法令的にはどのような取扱いとなるんですか?」
島課長: 「特殊構法ということは、建築基準法施行令第3章での構造規定や、それらに付随する告示、通達の考え方を適用しなくてよいということなんだ。すなわち、一次設計や二次設計の仕様通りに計算しなくてもよいということだね。」
中沢: 「ということは、センター回りということですね。」
島課長: 「そうだね。建築基準法上はこのような特殊構法に対しては、建設大臣※1の認定が必要となっているんだ。」
中沢: 「認定までの手続は大変なのですか?」
島課長: 「この大臣認定を取得するためには、まず日本建築センターに申込み、センター内の免震構造評定委員会が受理をしてくれることから始まるんだ。そして担当する先生がきまり、部会にて詳細な検討が行われる。このとき地震動応答解析の結果は、当然のこととして提出されているわけだね。 」
「このようにしてセンターより評定※2を取得し、その評定書をもとに建設省※1へ認定申請をして、大臣認定を受けるという流れなんだ。」
中沢: 「これらの期間はどのくらいかかるんですか。」
島課長: 「センター評定※2及び大臣認定までの手続きとして通常4ヶ月ぐらいかかるかな。最近は、免震構造の物件も多くなってきているんだ。あの阪神大震災以後、半年間で33物件の申請があったと言われているね。これは、阪神大震災以前においては10年間で80棟の実績であるからして、急激に増加しているのがわかるね。これにより、認定までの手続き期間も短縮しないと処理しきれない情況で、かなり早くなっていると言われているんだ。」
中沢: 「現設計基準によらなくてよいと言うことは、構造技術者にとってはより自由度が大きな構造設計ができるというわけですからよいことですね。」
島課長: 「よいことだと思うね。少なくとも今以上に構造設計に対して前向きに考えるということになるからね。」
中沢: 「免震構造が普及するということは、地震動応答解析はあたりまえにやらなければならないということですか。」
島課長: 「もちろんそうだね。今まで地震動応答解析というのは超高層建物が対象だったので、身近な感じはなかったけど、免震構造は一般の建物を対象にした構法なんだ。」
中沢: 「どのくらいの規模の建物に採用されているんですか?」
島課長: 「一言でいうなら、免震層で浮き上がり力が働かない建物に適用できるんだ。」
中沢: 「ということは、低層建築物ということですね。」
島課長: 「低層はもちろん、12〜13階建マンションにも適用しているね。また、住宅への適用もあるし、現在騒がれている耐震診断の補強設計の方法として、既存建物に免震装置を付ける考え方もあるんだ。さらには、地域の一区画の地盤をそのまま免震地盤にしようとの構想もあり、留まるところを知らないね。」
中沢: 「応用範囲がまさしく広いわけですね。いづれにしても、私たちが構造設計している一般の建物全てにかかわるということは、もう無視できない存在ということですね。」
島課長: 「もちろん!もちろん!」
「免震装置や施工技術は急激に進んでいるんだ。それらの価格も下がってきている。後は、構造技術者の新技術に対するレベルの向上だけが残っているんだね。」
「阪神大震災で、6300人を超える尊い犠牲があった。これを無駄にしないためにも、これからの構造技術者に対する社会的期待は大変大きなものがあるね。」
「今までのような黒子の存在の構造技術者でなく、お施主さんへいろいろ提案できる、前面に出た姿がこれからのあり方だと思うね。」
「今まさに、新時代に対応できる構造技術者が求められているんだ。中沢君、社会に大きく貢献できる構造技術者を目指してほしいね。」
中沢: 「よくわかっています。みていて下さい。」
(星 睦廣)

※1 この記事は1995年に書かれたものです。現在、建設省は国土交通省となっています。
※2 この記事は1995年に書かれたものです。現在、大臣の認定を受けるために必要な日本建築センターでの事前審査のことは性能評価と呼びます。


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