少し補足説明をさせて頂きます。
朱鷺(トキ)メッセ連絡橋(※)の落下事故は、現在裁判中であるため、誰もが語りづらい状況下にあります。
特に、この裁判の原告は新潟県であるため、県に対抗して語ることが仕事上の立場からも難しいとの話も出てきます。
また、この連絡橋の落下は通常の使用時に起こった事故のため、構造設計に何らかの問題があったであろうと推測し、被告側に支援をする事は危険であるとの見方が働いたりもします。
※ 朱鷺メッセ連絡橋: |
パブリックな呼称は、朱鷺メッセ連絡デッキですが、一般の方にもイメージしやすいように朱鷺メッセ連絡橋と記載しています。 |
このような観点からすると、静観することで良いとの判断に至っても不思議はないかもしれません。
しかしながら、これが構造技術者の将来にとって最良の選択なのかは、一考の余地があろうと考えています。
連絡橋の構造設計を担当した株式会社SDG代表の渡辺邦夫さんは、「基準法を満足している設計である事は自信を持って言える」と断言しています。
渡辺さんは「法を満足すれば良し」との風潮が技術者を不毛にしているとの視点のもと、自らはそれを超越した高いレベルで設計されています。(それゆえ、「法を満足している」と単に強調することは渡辺さんにとって低次元のことで、普段この言葉を使うことは無い事を付け加えておきます。)
それなのに何故落ちたのか?
については構造技術者の共通の問題として捉えることができると考えます。
本件の損害賠償請求額は設計・施工・監理等6社に対して共同責任賠償請求額として約9億円です。
特に裁判では、元請と下請けの責任の大きさの違いや設計・監理・施工の責任分担、さらには、監理業務の金額が非常に小さい場合にその責任の範疇はどこまで及ぶか、と言った報酬と責任に関する様々なことが明らかになります。
何が真実かと言う以前に、長期戦になるためお金や体力そして総合力の問題で「悪いのは弱者の構造技術者」となりえるかもしれないことは、容易に想像がつくかと思います。
最初に述べた観点から、建築構造関係の団体も動きにくいとして何も支援出来ないとしたら、団体の活動方針である下請け的職業からの脱却や建築構造技術者の職能の確立は、夢のまた夢となって消えてしまいます。
構造技術者の第一人者である渡辺さんを支援できなければ、団体会員の誰をも助けることが出来なくなってしまいます。
また、この問題は一個人への支援というより、建築構造の職能の確立が出来るかと言った話に繋がります。
そのような意味で、本当に今静観するだけで、何も行動しないで良いのでしょうか?
皆様方へお聞きしたいところがこの点です。
また、この点に関してお知恵を拝借できましたら幸甚の喜びです。