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■地震動応答解析のおはなし
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第7話 「固有値とは?(その1)」


中沢: 「島課長、おかげさまで地震力についてかなり明確にわかってきました。これからは地震応答解析のソフトを使って実際に数値実験をやりたいと思うんですが・・・。」
島課長: 「いいねー。どんどんやることだよ。」
中沢: 「ところが、なかなか勇気がわかないんですよ。」
島課長: 「どうしてかね?」
中沢: 「入力地震波の大きさをどのくらいにするかわかったんですが・・・。上部構造の建物のモデル化をどうするか?等、まだまだ理解していないところが多くて・・・。」
島課長: 「なんだ!そういうことで躊躇しているのか?」
中沢: 「しかし、課長!固有値とか、減衰とか、応答スペクトルとか、はたまた縮合マトリックスとか、分からないことが多くて、まだまだ自信がつきませんよ。」
島課長: 「覚えなければならないことがたくさんあることは事実なんだが、それらのことをまったく知らなくても、弾塑性地震応答解析をすることができるということをわかってほしいな。」
中沢: 「知らなくても出来るんですか・・・?どの振動の本にも固有値や減衰、応答スペクトルという説明から始まっていますけど・・・。」
島課長: 「弾性地震動応答解析のように弾性の範囲であるなら、固有値や応答スペクトル は重要な意味をもってくるね。」
中沢: 「弾性解析では重要で、弾塑性解析をするうえでは知らなくてもよい、というこ とですか?」
島課長: 「まあ、そういうことだ。特に固有値や応答スペクトルを知っていると、電卓を たたくだけで応答結果を得ることができるから大変重要なんだ。もちろん弾性の範囲内での応答の話だよ。」
中沢: 「それでは島課長、一気に弾塑性解析に行くには心の準備が必要なので、ここは固有値や応答スペクトルについてちょっと教えて下さい。」
島課長: 「固有値の何がわからないのかな。」
中沢: 「固有値とは固有周期のことかな。と言うぐらいしかわかりません。先日、振動の本を開いて固有値を調べていたら、固有値解析という、固有値を算出する方法について詳しく書かれてあったものの、固有値そのものの意味するところについては、はっきりしませんでした。」
島課長: 「固有値や応答スペクトルを理解するということは、中沢君が構造計算のよりどころとしている計算基準をさらに深く理解することにつながるんだよ。」
中沢: 「具体的に言うとどういうことですか?」
島課長: 「現基準は動的解析の多くの調査研究をもとに凝縮された規準になっているんだ。だから、例えば振動特性件数Rtなどは、応答スペクトルに相当するものだから、この辺を理解してると現規準が読み易くなるわけだ。」
中沢: 「ということは、応答スペクトルを理解するとRtの意味するところがさらに深くわかるということですね。」
島課長: 「そういうことだね。」
中沢: 「島課長、やはり固有値や応答スペクトルを理解してから、実際に振動解析のソフトを使うことにしましょう。この辺を具体的に分かり易く教えてくれません か?」
島課長: 「固有値というからには、それぞれの建物がもつ固有なもの、ということは想像できるね。」
中沢: 「建物がもつ、固有なものとは、各層の重量や剛性ということですか?」
島課長: 「そのとおりだが、今は建物のもつ振動性状を考えているので、建物が挙動するときの基本パターンのことなんだ。」
中沢: 「島課長、さっぱりわからないんですが・・・。」
島課長: 「それでは、ある基本パターンの波を考えてみよう。 例えばt1を周期とするsin波を考える。」
t1を周期とするsin波
「次にt2(=t1の半分)の周期をもつsin波を考える。」
t2(=t1の半分)の周期をもつsin波
「同様にして、t3、t4、・・・・・tnの周期をもつsin波を考える。」
中沢: 「いろいろな波がでてきましたが、これらをどうするんですか?」
島課長: 「それらの波を重ね合わせるんだ。」
中沢: 「重ね合わせるとは、ある時刻のときの振幅を、全て合計していくということですね。」
島課長: 「そうなんだが、その前にsin波の場合、原点の振幅がゼロなので、各周期の波においてランダムに位相をつけてから重ね合わせるんだ。」
位相をつけてから重ね合わせ
中沢: 「するとどうなるんですか?」
島課長: 「次のような、複雑なランダム波が得られるんだ。」
複雑なランダム波
中沢: 「このことは、何を言おうとしているんですか?」
島課長: 「これらのことを逆にたどっていくと、どんな複雑な波も、基本パターンの成分に分解できるということなんだ。」
中沢: 「なるほど、複雑な挙動も、基本パターンの集合体というわけですね。 ところで、建物の固有値と、この基本パターンとどうつながってくるんですか?」
(星 睦廣)


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