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■地震動応答解析のおはなし
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第19話 「減衰について(その2)」


中沢: 「履歴減衰ってどういうことですか?」
島課長: 「この減衰は、今後免震構造や制振構造をやる上では、大変重要な要素となってくるんだ。」
中沢: 「免震や制振って聞くと、何かゾクゾクするんですよ。ところで、どのように重要なんですか?」
島課長: 「まず、履歴減衰とは、どのような現象で起きるかだが・・・。 」
「一般の振動の本によると『材料の塑性化による履歴ループでエネルギー吸収が行われ、減衰効果となる』と述べてあるね。」
中沢: 「島課長、さっぱりわかりませんが・・・? 」
「特に『エネルギー吸収が行われる』とありましたが、どういうことでしょうか。」
島課長: 「例えば、弾性材を図1の@まで変形させ、その後変形を解除させたら、自由振動を起こすね。 」
「この時内部減衰(粘性減衰)がなかったとしたら、同じ変形分反対側に移動し、@−A間を永久に振動することになるわけだ。」
図1
中沢: 「はい、そうですね・・・。」
島課長: 「さて、次は塑性化した材について、同様に行ってみよう。まず、図2の@まで塑性変形させる。 」
「その後、変形を解除し、自由振動させる。このとき内部減衰がなかったとしたら、どこまで振れるかだが・・・。」
図2
中沢: 「図3のBの点はどのようにしてきまるかですね・・・。先程と同様に反対側に同じ変形のところまで移動する・・・??」
図3
島課長: 「違うね。この場合は変形量でなくエネルギーで考えるわけだ。 」
「まず@の点からA点まで移動することにより、構造体が吐き出したエネルギーは@A@′で囲まれる面積となる。そして、それと等価なエネルギーがたくわえられるまで変形が進むわけだ。」
中沢: 「と言うことは・・・。図3の@A@’で囲まれた面積と等しくなるように、ABB’の面積をつくればよいわけですね。」
島課長: 「そう言うことだね。」
中沢: 「エネルギーが等しくなるように振動すると言うことは、永久に振動してしまうのではないですか。」
島課長: 「いやいや、振幅はだんだんと減少していくんだ。それは振動するたびにエネルギーが逃げていってしまうからなんだ。」
中沢: 「えっ?でも先程は、エネルギーを一定に保っていたはずですが・・・。」
島課長: 「もう少し話しを進めないといけないね。先程のABB’のエネルギーが次のサイクルでは、BCB’のエネルギーしか伝えてないことになるんだ。」
中沢: 「ちょっと待って下さい。図4のBCB’のエネルギーは、そのままCDD’に伝わるわけですよね。」
図4
島課長: 「そのとうり。」
中沢: 「と言うことは・・・??」
島課長: 「ABB’−BCB’=ABCであるから、ABCで囲まれたエネルギーが消えてしまったわけなんだ。このABCを損失エネルギーと呼んだり、冒頭で述べた『エネルギー吸収が行われる』等の表現になるんだ。」
中沢: 「この損失エネルギーがあるから、ループを描くたびに振幅が減少していくってわけですね。」
島課長: 「そのとうりだね。」
中沢: 「前回お話し頂いた減衰定数ですが、一周期ごとにどのくらい振幅が減少するかわかるので、当然それから減衰定数も導き出せるわけですね。」
島課長: 「そのとうり。その材の履歴特性(復元力特性)がわかれば、履歴減衰の大きさが求まるね。 しかし、一般的には振幅の減少度合から求めるのではなく、損失エネルギーから求めるんだ。」
中沢: 「・・・??」
島課長: 「通常履歴特性は実験より求めるわけだが、一般の繰り返し加力試験においては強制的に外力を加えて行うため、履歴ループは図5のようになる。そして、図6のようにモデル化される。この斜線部分が@サイクルの損失エネルギーだ。」
図5
図6
中沢: 「この損失エネルギーが大きい程、減衰が大きくなるわけですね。」
島課長: 「そうなんだ。そして、この減衰の度合を内部減衰と等価な形に表したのが、等価粘性減衰定数(heq)っていうんだ。」
中沢: 「S造では2%,RC造では3%と言いますが、そのような%で履歴減衰の度合を表わしたということですか?」
島課長: 「そのとうり。」
中沢: 「等価粘性減衰定数を求める式はどうなりますか?」
島課長: 等価粘性減衰定数を求める式
「 ここで△Wは1サイクルの損失エネルギーだ。Wは等価剛性による弾性ひずみエネルギーで図7のグレーの部分だ。」
図7
中沢: 「heqのeqは等価と言う意味ですね。」
島課長: 「そのとうり。履歴型ダンパーもいろいろ開発されているが、目的はこの損失エネルギーが大きくなるように特性をもたせることなんだ。」
中沢: 「それは、簡単にできるんですか?」
島課長: 「鋼棒ダンパーや鉛ダンパー等は、どれもBi-Linear型に近い履歴特性を示すので、損失エネルギーを大きくするためにはダンパーの降状点を上げることなんだ。しかし、ダンパーの降状点を上げると建物に入力するせん断力が大きくなってしまったりするので、ダンパーの降状点の決定は、単純に上げれば良いと言うものではなく、注意が必要なんだ。」
中沢: 「はい、履歴減衰についてはよくわかりました。 」
「ところで、この減衰と免震構造とはどのような関係があるんですか?」
(星 睦廣)


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