株式会社 構造ソフト

製品情報ダウンロードサポート技術情報会社情報サイトマップ


■地震動応答解析のおはなし
トップページ > 技術情報 > 地震動応答解析のおはなし > 第28話


第28話 「建物の曲げ剛性とせん断剛性」


島課長: 「建物が高層になると、建物の曲げ変形が生じるんだ。」
中沢: 「曲げ変形とは、引張側柱と圧縮側柱の軸変形により生じる建物全体の曲げ型変形ですね。(図1)」
図1・図2
島課長: 「そう。図3における水平変位には、建物の曲げ変形分とせん断変形分とが含まれていることになるね。」
図3
中沢: 「するとどうなりますか?」
島課長: 「全体変形に占める曲げ変形の割合が大きくなってきたら、曲げ変形分とせん断変形分に分離することもあるんだ。」
中沢: 「水平変位を分離するんですか?」
島課長: 「そう、まず分離したうえで、それぞれ図3の方法にてトリ・リニア型の剛性を導き出すことになるね。(*1)」
中沢: 「建物の曲げ変形分とせん断変形分の分離というのは容易に出来るのですか?※1
島課長: 「意外と簡単な方法が武藤清先生の論文※2で提案されているね。」
中沢: 「わかり易くいうとどうなりますか?」
島課長: 「例えば、図1における建物の曲げ変形を考えるとき、実際の建物では床レベルで平面保持の法則が成り立たないわけだ。」
中沢: 「柱の軸変形が床方向に線形でないということですか?(図4参照)」
図4
島課長: 「そういうことなんだ。そこで柱の軸方向の歪と柱軸力を乗じると歪エネルギーとなる。この歪エネルギーが等しくなるように、平面保持の仮定における等価な全体曲げ回転角θ(この場合は曲率というかもしれない)を求め、これに対応する等価曲げ剛性EIを算出するんだ。(図5参照)」
図5
中沢: 「島課長!ちょっと簡単ではないですね。」
島課長: 「そうかな?詳しくは、武藤先生の論文を読んでみるんだね。」
中沢: 「そうします。ところで、等価曲げ剛性が導き出せたらどうしますか。」
島課長: 「図6に示すように、等価曲げ剛性より得られる層間変位が曲げ変形分で、残りが建物のせん断変形分となるね。」
図6
中沢: 「少しづつわかってきました。この曲げ剛性は弾性剛性のみでよいのですね?」
島課長: 「いいところに気がついたね。弾性剛性のままでよいかどうかは、柱の軸変形が弾性のままでいるかどうかにかかっているわけだ。一般の建物では、弾性のみでよいと思うが、煙突のように塔状のものはひび割れも考慮して、この曲げ剛性もトリ・リニア型でモデル化することもあるね。」
中沢: 「だいたいわかりましたが、この辺のところはソフト的に対応できているんですか?」
島課長: BUILD.DDシリーズでは全て対応できているね。先程の建物の曲げ剛性もトリ・リニア型まで対応できるし、図3で示したトリ・リニア型のモデル化の手助けもしてくれるから、パソコンソフトでは最も優れていると思うね。」
中沢: 「よくわかりました。最後に曲げ剛性と、トリ・リニア型のせん断剛性が得られましたが、これを串ダンゴ形に図化するとどうなりますか?」
島課長: 「図7のように串ダンゴそのものだね。この柱材に曲げとせん断剛性が入っていることになるね。また、せん断剛性のみのモデルの場合は、図8のように表現することになるが、図7のように区別しないで表すことも多いね。」
図7・図8
中沢: 「よくわかりました。」
(星 睦廣)

※1 評定物件でも、曲げ変形とせん断変形を分離せず、せん断型で振動解析しているものも数多くあります。
※2 第1回電子計算機利用シンポジウム 日本建築学会1979年3月 P205


[第27話へ] [28話] [第29話へ]

[地震動応答解析のおはなしへ戻る]



トップページへ
トップページへ

Copyright (C) KozoSoft Co.,LTD All rights reserved.