鉄骨造の耐震診断における留意事項
Q.
鉄骨造の耐震診断において、判定委員会に提出する計算書で気をつける点や必ず記述すべき事項等、留意事項を教えて下さい。
A.
1. どの法律、基準に従うかを明確にする
既存建築物の耐震性の判定は、建築物の耐震改修の促進に関する法律、(財)日本建築防災協会発行の「既存鉄骨造建築物の耐震診断基準」、その他国土交通省、文部科学省等、関係機関において定められた関連基準に基づいて行いますが、どの法律、基準に従うかを明確にして要求されている式にて計算書をまとめます。
弊社のプログラムでは以下のような対応となります。
「BUILD.耐診S造/2011年版」「BUILD.耐診S造/耐震補強オプション」
建設省住宅局建築指導課監修(財)日本建築防災協会発行の「2011年改訂版 耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震診断および耐震改修指針・同解説」
「BUILD.耐診S体育館/平成18年版」
(社)文教施設協会発行、文部省大臣官房文教施設部「屋内運動場等の耐震性能診断基準」(平成18年版)
「BUILD.耐診S体育館/耐震補強オプション」
文部省発行「学校施設の耐震補強マニュアルS造屋内運動場編(2003年改定版)」(財)日本建築防災協会、(社)建築振興協会発行「実務者の為の既存鉄骨造体育館等の耐震改修の手引きと事例」
2. 構造図がある場合も予備調査は必ず行うことを原則とする
主要部材断面の確認を行い、柱・梁・ブレースの継手および仕口(ボルト・プレートの詳細、突き合せ・すみ肉溶接の別とその寸法)、劣化の程度を調べます。現地調査を計算書に反映する事が一番大切です。
特に鉄骨造の場合、主材自体は靭性があるものです。継手、仕口は脆性的な破壊になる為に適切な検討を行う必要があります。突合せ溶接部はUT検査を行い、診断時に予算が無い等の理由でできない場合は、報告書に補強設計時に確認する旨を明記しておくことが大切です。溶接部が突合せ溶接ではない、欠陥がある場合にどのように耐力評価をするか明快に記載する事、的確な靭性指標F値を決定することも大切です。また、2次部材(天井、ALC壁、CB壁など)の状況および地震時に落下・崩壊の危険性についてもコメントする必要があります。
3. 既存建物の形状を把握して適正なモデル化を行う
耐震要素を明快にして、屋根・床面の水平剛性を確認し、各耐震要素になる構造までの伝達を確認します。
4. 診断結果の決定要因を明確に記載する
各診断結果数値を明快に記し、どこのどの部材が決定因子となっているかを記載しておくことが大切です。
5. 改修設計に関する注意点について
耐震改修する建物は古い鋼材が使われている場合があります。その場合、溶接を想定していないことや、溶接に適していない鋼材が多く溶接性の低いものがあります。また、現場では上向き溶接等の無理な姿勢で行う事も多く、適正な技術者も少ないのが実情です。従って、むやみに溶接による補強を行わず、できるだけボルト接合を採用することが望ましいと言えます。 |
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