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■連載コラム(4)


「構造計算書偽装事件の社会的背景と耐震性能のほんと!」
〜21世紀にふさわしい耐震性能のマンションとは?〜


4. なぜ耐震性能を正しく教えてくれないの?

 大地震が起こったとき建物がどのくらいの損傷を受けるかについては、マンション購入者だけでなく販売業者においても建築関係者から詳しく話を聞くことができません。それはなにゆえでしょうか?


4.1. 曖昧な話

 第一に、耐震性能について確認しようとして質問したとしましょう。
 建築主(ビルのオーナやマンション販売業者)は地震に強い建物を造ろうと当然のこととして思っていますので、それを設計担当者に聞きます。設計者は建築主に対して不安になってしまうような大地震時の損壊の話を正確に話すことは、受注につながらないため避けたいとの心理が働いても不思議はありません。

 そして次のように説明するでしょう。「地震が起こったときにこの建物だけが倒壊することはありません。200年に一回あるかないかわからない大地震に対して、他の建物が壊れるときにこの建物だけは頑強で残るようだと建設費が高くなるため、一般の建物と同じ耐震性能でよいですよね」と、建築主は「まぁーそれでいいか」といったところでしょうか。

 この会話でマンション販売業者でさえも、大地震時に建物の資産価値は損なわないと勝手に思っている場合もあり、融資をする銀行の支店長さんは当然のこととして「大地震時に資産価値がなくなる」とは思っていないわけです。


4.2. 分業化

 第二に、設計者に耐震性能の話を聞いても、「実は正確に説明できない」と言ったことがあります。すなわち建築設計は業務範囲が広く、それゆえ完全に分業化されています。設計を大きく分けると意匠設計、構造設計、設備設計となり、それぞれその道の専門家に仕事を割り振ります。前述した建築主と会話をする「設計者」とは、意匠設計者のことを指します。

 意匠設計者は全体計画からデザインや間取りの設計をし、柱・梁(はり)・壁
の構造体は構造設計者へ、給排水・電気は設備設計者へ依頼します。そして施工は建設会社からさらに細かく工事種目別に協力会社へ発注することになります。

 ここにはピラミッド型の請負体制が確立されています。その頂点で采配している人が建築主のマンション販売業者で、そこから設計依頼を受けているのが意匠設計者です。意匠設計者は耐震性能に関して「法で示された最低基準で構造設計をして」と構造設計者に依頼しますのでそこまでは知っていますが、それ以上のどのくらいの損壊が生じるかといった専門的な詳細については、よく把握していないため正確に説明できないのです。


4.3. 会うことのない構造設計者

 第三に、耐震性能について語ることができる構造設計者にこの辺を問うことができるならよいですが、元請負(もとうけおい)の設計者とは異なり、そこから下請負(ときには孫請負)の立場の構造設計者であるため、表舞台に出てマンション購入者や販売業者と話す機会がありません。また設計者からそのような場面に呼び出されることもないために皆さんは構造設計者と会うことがないのです。

 以上のように、皆さんのおかれている環境は、正確な情報を得るような環境にはないと言えましょう。


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