1.市之瀬敏勝 様・名古屋工業大学教授
たいへん力のこもったメッセージを読ませていただき、勉強になりました。 私はこの問題に関して専門外ですが、感銘を受けました。
2.記名無し・JSCA会員
小生は、現在63歳。2年ほど前からの個人事務所経営者です。小生とは無関係と思っていましたが、今回の星様のご見解を読んで、思い当たることも多く、あらためて、考えさせられています。
構造技術者の置かれた社会的立場、責任範囲を明確にする努力は、JSCAにしか出来ません。自分に何か出来ることがあるのかどうか、考えているところです。 小生も少しずつ資料を読んでみたいと思います。
3.森田司郎 様・財団法人 日本建築総合試験所 理事長
本件については、構造技術者の一人として常々強い関心をもっておりましたので、興味深く拝見いたしました。他の関連記事では書かれていない事情を知ることができ、貴重な情報と存じます。
小生はこの事故を「技術分野の責任領域の隙間」という観点から解釈しておりましたが、実情はもっと複雑のようです。とくに発注者の責任についてのご見解は特筆に価すると存じます。“事故が起こらなければ事故はなくならない”と自嘲的に言われますが、発注形態も含めて他山の石とならないようにしなければなりません。構造設計者の職能確立の重要性があらためて認識されます。第三弾を期待しております。
|
(株)構造ソフト 星よりコメント |
|
森田様から別途ご指摘いただきました表現につきまして、以下のように改めさせて頂きました。
|
|
修正前 |
「・・・吊り型トラス構造と呼んでいるのは、・・・テンションを入れることで、連絡橋に上向きの力が働くことから名付けられている。この上向きの力が下向きの荷重と相まってスラブが水平を保つ事になる」 |
|
修正後 |
「・・・吊り型トラス構造と呼んでいるのは、・・・テンションを入れることで、連絡橋に上向きの変形が生じることから名付けられている。この上向きの変形が下向きの荷重による変形と相まってスラブが水平を保つ事になる」 |
|
「吊り型トラス構造」に関する上記の表現は、読み易く・イメージで伝えることに主眼を置いたためのものですが、この構造原理は、次の資料で詳細に説明されています。参考にして下さい。
建築情報誌「建築技術」の2004年9月号205〜206ページ(図解) |
4.神田順 様・東京大学教授
拝見しました。風のデータに着目されたのは大事な視点であると思います。県の報告書、渡辺氏の見解(建築技術連載)をわれわれがどう判断するか、ということだと思いますが、ジャッキダウン時の過大たわみの影響を評価することも、定量化はなかなか容易でないように思います。管理者としての県の責任が極めて大きいことについても同感です。
かつてスペースシャトル・チャレンジャーの事故でも、低温下におけるシールの耐力低下を技術者が警告したのに、責任者はゴーサインを出したことが惨事を招いたわけですが、技術者からの警告がどれだけ出せているのかという点が、今後の教訓としてあるようにも思う一方で、構造安全性を軽視したプロジェクトの責任体制が今の建築士制度、確認申請制度でとれるのか気になるところです。
5.ミュー建築設計・神奈川県
特集レポート読みました。やはりこの事故は、今の我々構造設計者のおかれている社会的立場の矛盾点を投影していると思います。これだけ頻繁に地震が起き、「防災番組」のどのチャンネルでも報道されているにもかかわらず、一般の人々の関心がその建物の構造設計者に意識が向かわない事がこの事故の背景にもあるのではないでしょうか?自分の経験からもこの事故はただ利権の巣窟となった公共工事でもあるとも理解できます。
地元設計協同組合から仕事を順番で取っただけの事務所(自分も昔、福島県で談合的な事に参加したことがあります。「今回は、順番だから地元協同組合に譲ってくれ!」この一言で決まり。)裏で県の上層部とコネをもったゼネコンの表メンツと工期と予算の壁。
このような環境の中、構造設計者にあたえられたのは、設計変更の権限がなく、ただ時間に追われる過酷な条件下で膨大な構造解析を行い、現場に投影できない弱さ。責任人柱ともいえる構造設計者の立場。まして、意匠的に構造美を要求される連絡橋なれば、設計施工の頂点の権限くらいは、付与されなければならないのに。たぶん発注者とゼネコン、地元意匠事務所からでてくる意識は、ただの下請け計算屋。悲しいかなこれが現実。
愛知県では、確認申請時には「3階以下かつ500m2以内の建物は、構造計算書、構造図の添付が必要ない。」これをどのように解釈するのか?意匠設計者はこう言い放つ「カンピューター」でやってくれ。予算がないから構造設計は必要ないから部材の大きさだけ教えてくれ。ただ申請図書に構造関係書類の添付が必要ないだけなのに、構造設計が必要ないと理解する発注者。これで大きな地震がきたらどうするのでしょう?せめて「気休め」のつもりでも構造計算をしたほうがいいのでは?「自分のところには構造ソフトのいいソフトがあるから」と進める自分。毎回仕事をするたびにこの繰り返し。これが世界一の地震国の現実基準ですよ。
まだこれと同じ様な事はいくらでもあります。とある飲み屋のたわごと「お宅の仕事はなに?」「建築構造設計屋です。建物の構造計算しております。」「そうー、ところで構造計算すれば、地震がきたら建物は保つの?それは数字のあやなんでは?」「お宅のカンピューターよりはましではないですか!」と一言わざる自分の寂しさ。この方、立派に大学教育を受けているのです。
TV番組での建築放映も見ているとおかしな部分も感じられる。構造を犠牲にしても、見場ばかりカメラは追求している。もっと耐震性レベル5とか1とかの説明基準を持って放映したらいいのでは。今後、確認時にこの耐震レベルが検査機構とかから付与されてもいいのでは?
今、防災に関心があつまっているこの時に、なにも言えずTVコマーシャルも撃てない自分たちの取り巻いている現実に嫌気がさしております。不況の二文字が幅を利かせる世相の時ですし、経済原則は、越えられないのが現実です。
今回の「朱鷺メッセ連絡橋落下事故」は、その組織を構成した人と、構造設計に理解をかけた人々も共犯だと考えます。構造設計者には、裁判費用の募金箱でも設置したほうがいいのではと考えますが。
とりあえず、次元の低い話で申し訳ございません。上記の様な事も社会の一断面なんです。
6.渡辺邦夫 様・構造設計集団<SDG>・朱鷺メッセ構造設計者
構造ソフトのホームページで、星さんの「その実態から私が見たもの」を拝読いたしました。貴重なご意見を述べられていることに敬意を表します。
実は、SDGのホームページに何故、この事故について掲載しないのだ、というお叱りを事故直後からいろいろな方に言われてきたのですが、「何故、落ちたのか」が判らなければ載せようがない、というのが僕の考えでした。そんなときに星さんのご意見を拝見して、なるほど議論を発展させるためには、こういうやり方もあるのだな、と感服した次第です。
この事故は、きわめて小さな確率で偶然に、そして幸いにも人身事故をともなわない事故だったので、事故があったこと自体がどんどん「風化」していきます。事故の真の被害者である新潟県民からも忘れ去られつつあります。新潟県当局も早く幕を閉じたいので「風化」を促進しています。
しかし、建築・土木の専門分野では、決して「風化」させてはならない事故です。その真の落下原因を明らかにし、二度と繰り返さないための教訓を導き、そのことを社会的に定着したときに、はじめて、この事故は終焉を迎えるのだと思います。
事故発生以来、既に、1年半が経ちました。いまだに落下原因は証明されていません。自然落下の原因解明という問題に取り組み、それを解き明かすことができるのは、この世の中で、僕たちの専門分野の方々だけです。
昨年の前半に新潟県は県内マスコミを利用して調査終了の世論操作をしていました。困ったことだなと一人で考えていたときに、「建築技術」の橋戸幹彦編集長から連絡があり、「建築技術」は建築界の技術誌だから、技術工学の視点に絞った事故原因の模索を連載しないか、という話で、僕はそれにのることにしました。
集めうる資料をもとに、それを整理し、事故の間接的原因には一切触れずに、「何故、落ちたのか」を主題にした連載をしてきました。事故をキチンと記録しておきたかったからです。
この資料が、もっともわかりやすく出来ているので、この事故を知る上では是非、見ていただけるとありがたいです。
真相究明は、時々刻々と進行中ですから、最初は系統立てて整理しようと考えていたのですが、その時々の出来事もはさみ込んでいるので、全体として若干、乱雑になってしまいました。
以下、「建築技術」誌に連載した各号テーマと発行月です。参考にして下さい。
連載テーマ 「何故、落ちたのか」 |
序章 |
連載にあたって |
2004年06月号 |
第1回 |
残存デッキを利用したロッド定着部の現地試験 |
2004年08月号 |
第2回 |
全体計画と構造設計 |
2004年09月号 |
第3回 |
残存デッキを用いたロッド定着部の実験室試験 |
2004年10月号 |
第4回 |
施工の実相 |
2004年11月号 |
第5回 |
事故原因・SDGの分析と見解 |
2004年12月号 |
第6回 |
「新潟県事故調査委員会の調査結果報告書」の疑問点 |
2005年01月号 |
第7回 |
怒ったってしょうがない、知らないんだもの(座談会) |
2005年03月号予定 |
第8回 |
最終回 |
未定 |
現在のところ「何故、落ちたのか」は未完です。
技術工学の世界では、さまざまな現象を分析し、解析し、想像し、直感力を動員し、その結果を組み立てて検証する、それを観察の角度を変えながら繰り返し行うことによって、ある「仮説」をたてることができます。そして、最後に、実験とか試験を行い証明するという作業が必要です。「仮説」が証明できたときに、それは正解といえ、証明できなければ単なる「仮説」です。
今、この事故の原因はこうではないか、という「仮説」はできています。しかし、それを証明するためには、落下した部品の試験とか残存デッキを利用した実験が必要です。PC定着部については過半の試験をしてきたのですが、まだ不十分です。鉄骨については、部品を県当局が保管倉庫にしまい込んで出そうとしません。だから「証明」ができなく、未完なのです。
現在、この事故がどうなっているかの概況をまとめました。時間があるときに目を通して頂けると幸甚です。
※ |
「建築技術」誌の連載「何故、落ちたか(最終回)」は、2005年5月号に『対談 落下原因は「そんなことなの」川口衛×渡辺邦夫』とのタイトルで掲載されました。
|
7.匿名希望・広島県
私は、構造ソフトの社長 星さんの書いている視点ではなく、下記に示す落下事故調査斑、事故調査委員会の報告書を基にした視点でなぜ落下事故が起こったのかの問題点を考えてみた。
新潟県は、事故直後に施設設置者として、現場の復旧、事故原因究明を目的とした朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査斑を県庁内に組織した。その構成員は、港湾空港局、土木部の職員である。
また、第三者機関として朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査委員会を、5人のその方面のエキスパートで発足させた。この事故調査委員会では、5ヶ月間に渡り事故の発生原因の調査検討を行い、10回の委員会が開かれた。その報告書は、新潟県港湾空港局のホームページに発表されている。
この報告書によると、構造設計者、構造監理者としてSDGが組織図に表記されている。また、意匠事務所である槇事務所とは、独立して業務を行っていると明言されていて、意匠事務所の下請けの仕事をしているのではない。
これこそ、構造屋が願う最高の仕事の流れであり、さすが渡辺邦夫!拍手喝采である。
このように構造設計者として、皆が願う立場にありながら、なぜ事故はおきたのか?
報告書を基に、私は構造監理に絞って原因を下記の2点で模索することにした。
1.溶接の問題について
現場溶接は温度、風については注意させるべく監理するのは常識であり、なぜちゃんと構造監理者は監理できなかったのか、このへんの所がどのようになっていたのか気になるところである。
溶接に関しては、事故調査委員会の第9回委員会の議事録で「ブローホールしかない」と有り、あまり重要な欠陥ではない事を言明されているが、顕微鏡検査を2004年の明け早々に報告するとあった。しかし、この報告書は1年後の今でもインターネット上には公開されていなく、以後溶接に関しては一切触れられていない。この所も気になる。
2.安易なジャッキダウンについて
構造監理において最も重要な第1回ジャッキダウン時に、現場にいなかったのは構造監理者としてあってはならない事である。
工中に設計変更があり、余分な設計に時間を費やさなければならない状況であったとしても、現場との密な連絡のもとで現場の施工状況を把握出来ている必要がある。
それが無く、ロッド張力の導入量及び方法を事前に指示することもできなかったことは、構造監理者としての任務を果たしていないのではないか?
上記の2点については、新潟県側の見解のみを書いており、構造監理者側からとしての見解も当然あることでしょう。
報告書による「斜材ロッドの定着部の設計せん断力不足と設計不備」に対しての技術論の反論はもちろん重要ですが、構造監理についても真実を是非知りたいと思う所です。
町場の構造屋が目標にしている技術力、構造設計の職能を確立している様に思える中で、なぜ事故が起こったのか。構造設計の第一人者である渡辺さんには、構造設計者、構造監理者として技術者の正義を徹低的に解明して欲しい。
8.岡本憲尚 様・JSCA会員
1.はじめに
事故発生から約1年半経過したが、この事故について状況を本当に理解している構造技術者は少ない。量の多い情報や声の大きい情報は比較的目にとまりやすいために、それらの断片的な情報でそれなりに判断しているというのが現実であると思う。われわれ技術者は一面的な情報だけではなく、多面的な情報をもとに真実を追究する目が必要である。
マスコミの情報は必ずしも我々が知りたい真実をそのまま報道しているとは限らないし、発表されている報告書も同様で、真実とは違う場合がある。同じ事実の観察でも立場の違いで表現が異なるし判断が異なるのは当然である。さらに故意に表現を変えている場合もあるので、我々は色々な資料から、自分なりに判断するしかない。
2.真実とは
そこで、私は発表されている関係資料を収集することにした。分厚い資料ばかりであるが、特に新潟県事故調査委員会の報告書(以下、新潟県報告書)は、新潟県のWebで公開されているもの以外に、大きなダンボール二箱で20sもの資料であるが取り寄せた。膨大であるため全てを読みきれるものではない。しかし、目にとまる記事や発表されるコメントについて、手元にある資料を調べる事で判断ができるようにした。
例えば、「建築技術」2004年12月号と2005年1年号で紹介された溶接の問題については、新潟県報告書のUT検査報告書を調べる事により、ブローホールの存在する梁フランジで「欠陥なし」と記載されていることが確認できる。さらに、新潟県の調査委員会では、そのことについての詳細な検証をしていないことがわかった。実物で確認をしたいと言っているSDGの要請を無視している新潟県の対応に疑問がわいてくる。
さらに、ロッド定着部の耐力についてであるが、新潟県報告書では第一建設が行った実大実験の数値を採用している。第一建設のWebによれば、実験は落下事故日から1ヶ月もたたない9月21日に行なわれている。しかも、コンクリート材齢4〜5日で実験が行われている。つまり、施工後2年経過したコンクリートと4日のコンクリートが同じ性状を示すと新潟県報告書は判断していることになる。
また、別の話題として、事前に準備しておかなければならない現場での各書類を、新潟県の指示で事故後に作成したという話も聞こえてきている。これは「橋梁&都市」2005年1年号にも同様の話題が紹介されている。
このように、色々な情報を見て初めてわかること、それでもわからないことがあり、真実はどこにあるのかという判断は、事故関係者以外にとってはたいへん難しい。そういう意味でこの構造ソフトのWebサイトの意義は大きい。このWebサイトを通じて情報交換を行い、さまざまな人の見解を知ることで、事故についての考察が深まり、構造技術者としてどうあるべきかというところまで話題が発展することを、構造ソフトの星社長は期待しているのではないだろうか。
3.技術工学的な事実
事実を二つに分類してみた。
一つは「技術工学的な事実」、もう一つは「契約と体制の事実」である。
まず、技術工学的な事実であるが、SDGの渡辺氏が今のところ一番努力している部分である。渡辺氏はそれを究明することが技術者としての使命であり、被害を受けた新潟県民に対しての責務だと考えている。そのためSDGは、色々な検証を自費で行っている。
・崩壊起因箇所特定のための崩壊形シミュレーション解析
・残存デッキによるロッド定着部の現地引張実験
・ロッド定着部を切り出しての実験場耐力試験
現在のところ、これらの実験で落下の要因はロッド定着部起因説ではなく鉄骨上弦材起因説が有力になってきている。しかし、私の技術的知識不足と認識不足では、これらの技術的な議論に入っていけない。
不思議なのは、これらの解析や実験を個人の事務所が行っていることである。本来あるべき姿は発注者で統括責任者でもある新潟県を含め、関係者が協力し技術工学的な真実を解明していくべきものだと思う。真実が明確になって初めて事故に対する責任分担が見えてくる。裁判に勝つためにという理由で、技術工学的な真実がゆがめられてほしくない。
2004年5月にパリ郊外のシャルル・ド・ゴール空港で発生した屋根崩落事故の場合は「建設関係者の責任を問わない」ということで情報を提出しあい、技術工学的な問題を解明しようとしている。このような社会的な体制が日本でも必要ではないかと思う。
4.契約と体制の事実
そこで、私はもう一つの事実、「契約と体制の事実」に注目している。設計段階では問題がなくても施工段階で問題が発生することがある。それは、我々の日々の設計活動では身近な問題でもある。契約と体制について把握することは、どこに問題があったかを知る手がかりになる。そして、それを自分達の建築活動の問題としてとらえ、是正していく事がよりよい建物造りにつながると思えるからである。
下図はSDG配布資料より抜粋した発注・設計・監理・施工の組織図とその契約期間である。
(図をクリックすると拡大表示します)
A)契約体制
まず、体制図には、監理の部分に槙事務所とSDGは入っていない。少なくともSDGはそう認識しているということである。
監理契約をしていないと判断できる理由は以下がある。
・工事中のそれぞれの工程でSDGには監理者から連絡が入っていない事。
契約しているのであれば、現場から率先して監理に関わる連絡が入るはずで、SDGの今までの設計活動における現場に対する取り組み方をみていると、連絡を無視した対応をするとは考えにくい。 |
・裁判において県の訴状の中にSDGが関わる監理契約書がない事。
・新潟地方裁判所における裁判官の発言。
2005年2月8日の第二回口頭弁論(円卓方式)で、裁判官が契約関係のない槙事務所とSDGが訴訟相手になっている理由を原告(新潟県)に質問しているが、原告は即答できなかったと聞いている。 |
等があげられる。
では、なぜ契約をしていないSDGは現場に関与したのか。
私は、下記の状況により関与せざるを得なかったと推測している。
・ |
当時、同時に動いていた朱鷺メッセの現場にSDGのスタッフが常駐していた。 |
・ |
現場での問題を、工事監理者(福地事務所)に質問をしても明確に答えられないため、SDGに直接聞いてきた。 |
・ |
今までの設計活動からSDGが構造監理をしないということは有り得ないと思ったメーカーが直接聞いてきた。 |
・ |
設計変更などがあり、その対応をしているうちに巻き込まれた。 |
そこで、気になるのは
・契約関係にない立場の者のアドバイスはどれだけ有効か。
・現場監理者の判断の方が構造担当のアドバイスより優先するのではないか。
・SDGは契約関係がないのにどうしてアドバイスをしてしまったのか。
最後の項目は愚問だと思いつつ書いてみた。建築に携わっている者として良い物を創ろうという思いがあるかぎり、ましてや、今回のようなプロジェクトで現場が困っていることがわかれば、契約関係にないといえども対応をするのが技術者として普通であろう。それが、技術者としての性のような気がする。それを攻められては返す言葉がない。
しかし、今回のような事態になると、契約上(法律的に)どのような意味があるのかを意識して行動しなければならない事だったことがわかる。
したがって、私としての最大の関心事は、「なぜ構造監理をしっかりやらなかったのか」ではなく、「なぜ現場にアドバイスをしてしまったのか、しなければならない状況になったのか」である。あわせて、設計と監理の分離の問題についても考えたいと思っている。
B)契約期間
次に、契約期間表をみると、設計が完了する前に工事がスタートしている。工事金額が確定しないうちに工事の発注はあり得るのだろうか。受注できるのであろうか。また、一般的に行政の事業には年度内竣工を至上命令として死守する(させる)慣習がある。しかし、行政の事業だからといってそれが許されるはずがない。このあたりは、いわゆる地域特有の問題が見え隠れしているような気がする。
5.おわりに
事故の真実の究明は、技術工学的な事実の解明と同時に、それにいたる契約と体制の問題が極めて重要である。
1999年9月に発生したJOC東海村臨界事故は、初歩的なミスにより発生しているわけであるが、その背景には、作業そのものの問題とは別に、会社の経営の問題、さらに国の原子力政策の問題に起因している部分があるという調査報告がある(失敗学会のWebより)。
今回の事故においても、関係者個々の問題としてだけではなく、政策を含めわれわれ建築業界の根本的な問題としてとらえることが、この事故から学ばなければならないことだと思う。そのためにはまず、事故に関心を持ち、情報を収集整理し、真実は何かを自分自身で見極めることである。
9.記名無し・大学院(学生)
私は、建築構造を学んでいる学生です。「朱鷺メッセ連絡橋落下事故/その実態から私が見たもの」の一連のページを読ませていただき大変勉強になりました。
構造技術者について考えさせられるきっかけとなりましたし、学校ではなかなか学ぶことのできない構造設計者の立場、現場における構造設計者と工事監理、現場管理体制、責任範囲について、将来建築構造の分野に進みたいと考えている者としては、非常に学ぶことが多かったです。
一読し、構造技術者を目指すことに対して少々不安を感じましたが、皆様方の真相を解明しようとする情熱、社会的地位を向上させる努力を拝見いたしまして、それらの一端をになえるように建築構造を学んでいきたいと思いました。
関連記事を読み今後に生かしていきたいと思います。
(株)構造ソフト・星 睦廣
構造設計者の「構造監理に関わること」や「設計変更に伴うこと」での事故の責任は、この落下事故において重要な位置付けとなっていますが、これらのことは連絡橋特有の話と言うわけでなく、構造設計者の皆さんも日常的に遭遇している場面です。
ところが一旦事故が発生すると、「構造設計者の責任」として様々な部分がクローズアップされてきます。構造設計者の責任有無とはどこまでなのでしょうか?
例えば、意匠設計者から「現場に行って配筋検査をして下さい」と言われたときに(一回ぐらいなら)無償でやりますか?それともこのような「構造監理」は別途見積りと明文化して行っていますか?
構造設計の業務範囲が曖昧だと、その責任の範囲は曖昧な部分も含めて責任追及されるのが、事故が起こったときの現況です。
「構造設計者の職責」に関わる実態や改善策、目指すべき方向性等、この事故の直接的・間接的な事柄に留まらず、その教訓を含め幅広いご意見・ご感想を頂戴できれば幸いです。
10.山口昭一 様・(株)東京建築研究所 会長
構造設計は命がけの行為です。
私は、常々これを主張してきましたが、多くの方が耳を傾けてくれないことに悩んでいます。
大げさな表現ではないのです。今貴兄が取り上げている、朱鷺メッセの事故でも明らかです。
日本の設計者は構造設計者を含めていわゆるプロフェッショナルとしての意識が非常に低いと言えるでしょう。設計はものつくりの原点で、これを任された設計者の責任は重いのです。一般に施工は設計図書が契約書の重要な部分を占め、設計図書に忠実であることを求められているからです。
どこまでの責任を負うのか、負えないのか設計者は明らかにしてから仕事にかかるべきです。
私は、何回か次の言葉を多くの人の前に出しました。
メキシコ市に建てられた“ラチノアメリカーナ”ビルの設計説明書の冒頭に書かれていた“ハムラビ法典”の一部で「もし建物が人を殺めることがあれば、建築家は死刑・・・」と言った内容です。「structure」(JSCA季刊誌)にも投稿した記憶があります。
この設計説明書の冒頭に書かれていた“設計者の心構え”に心をうたれ、かくあるべきと感じています。
11.神谷幸太郎 様・K構造デザイン
私は、まだ資格も持っていない構造屋の一人ですが、この「朱鷺メッセ連絡橋落下事故」の一連のレポートと皆様のご意見は参考になります。
一人の構造設計者として日頃から感じていることの危険性を再認識した次第です。この問題は、私たちが建物を建設する業務システムが日頃の業務の中で慣れによって矛盾が生じていることの氷山の一角かと思います。
建設の中の設計の分野において、意匠設計、構造設計、設備設計というのは、大きな3つの基本軸だと思います。
その中で設備設計は、他の二つと一線を画して別の業務システムとして機能し、他の設計の流れと調整した上で成り立ちますが、構造設計については、本来設計全体の重要な建物性能の一端を担うはずです。
構造設計の受注システムは、以下の4つが代表的なものだと思います。
1.建設費を出す側(施主)から意匠設計と構造設計とに分離発注
2.建設費を出す側(施主)から意匠設計へ発注し、その意匠事務所から構造設計へ発注(孫請負)
3.設計施工受注のゼネコンから意匠設計と構造設計とに分離発注
4.設計施工受注のゼネコンから意匠設計へ発注し、その意匠事務所から構造設計へ発注(ひ孫請負)
1.の流れについては、本当の意味で構造設計者の力量が試され能力を発揮するチャンスでしょう。
2.については計算内容や図面については構造設計者の力量の範疇ですが、建設される建物の性能については意匠設計者の力量に大きく左右されます。
3.と4.についてはゼネコンの力量の範疇だと思います。
構造設計者の受注システムのパターンとしては、やはり1.以外のものがほとんどで、構造設計者の能力は間違っていても「人のいうことを聞くこと」と「指示されたことには逆らわないこと」でしかないように思います。
現実に私は、某大手ゼネコンの仕事で要求事項がころころ変わるので、取りまとめ後に指示を出していただくようお願いしたところ、担当者は怒り出して「言うことを聞かないなら仕事を出さない」と言われたことがあります。
悲しいかな構造設計者の重要性についての社会的認知度は非常に低く、性能で10倍良い設計を行っても、コストが1割高いから設計を任せられないということが現実ではないでしょうか?また、その尺度となるコストのコントロールもゼネコンの見積(いつもの施工方法の見積)でしかないのです。
結局のところ、発注する側の認識度もしくは技術に対する理解度が構造設計者の評価に直接影響することになります。
最近、多田英之先生の「建築の設計と責任」という本を読みました。内容はおいておきまして構造設計者の責任を痛感した次第です。
責任をまっとうできるよう常に努力することも必要と思います。
構造監理につきまして、私は現状では見積の中に入れております(先の1.及び2.の受注システムで)。ただし、内容的には配筋検査などのポイント検査です。その内容までは見積の中に入れており、いつも「高い」と言われます。
「安く」と言われた時は、その構造監理(ポイント検査)分を値引きし、現場確認は行きません。その代わり出来るだけミルシートや工事写真を送ってもらい、検査機関の検査以上に写真を見て、現場の立場に立った視点で検査に通りやすいのは「こうだよ」と言う指導の形で指示を出しております(その方が現場管理者が理解しやすいこと、是正も適宜なされることが多いため)。
しかし、その処置後の結果確認はなかなか出来ません。その代わりとして指示書を発行する際に、指示内容に沿った内容にて良好な施工がなされた時以外は、責任は現場にあると明記しています。
根本的対策ではないですが、そういった処理しか出来ないことが現実です。もっとも、孫請けひ孫請けの物件の場合には納品までしか物件にタッチすることが出来ません。
まともな構造監理を要求される物件は、ほとんど私のような者には仕事として回ってこないです。人数の居る設計事務所に居て「新建築」に名前が出たこともある私ですが、業界の流れは組織事務所やゼネコンの方へ流れていると思います。その中で生き残ることに必死な構造屋が多いことも事実ではないでしょうか。
最近、数件ほどそのような同業の構造屋の設計した物件の見直し(名目上VEなど)の要望が入り、1,000から2,000m2程度のビルで、ものすごい内容で確認申請が降りているものを見かけております。ものすごい内容というのは、構造設計の一貫した思想がなく、数字の語呂合わせで理論的に成り立たない内容であったり、都合の良い解釈で計算していたり、民間の審査機関の審査で、安全性に関して見落としたと思われる部分があったりしたものです。
生き残ることに必死で本来の業務を忘れた構造屋さんではないかと思うのですが、世間一般がこの内容だったらと思うとぞっとします。この内容が社会的に知れたら、今建てているマンションやオフィスビルが危ないと思うは、私だけではないと思います。
乱文&長文で申し訳ありませんが、小さな構造屋の思いを書いてみました。
12.宮代健次 様・熊本県
構造設計者に無償で配筋検査を要請する呼び出しはありませんね。
ただ、現場において杭心のズレとかがあったときの検討は言ってきます。
杭心のズレは、監理業務に関わって発生する為、監理を請負っている意匠設計屋の責任ですよね。
役所工事で監理料も出ている物件であるなら、構造設計者にその費用は払うべきです。杭心のズレが多いときは、検討に半日以上かかります。
この検討作業まで、無償でやらなければいけないか疑問に感じます。構造設計料で値切られた上に、無償サービスすることに不満を感じます。
私の周りで、設備設計は監理業務の再委託と言う形で監理業務に下請け参加する方式になっていますが、構造設計者にはそう言うのがありません。
役所は、意匠設計屋が構造監理をやるという風に認識しているのでしょうか?
構造設計者の立場の低さが、地方でも目に付きます。
13.小池静夫 様・静岡県
星さんのご意見に同感します事、大であります。
民間と行政側のあり方、姿勢の違いはいつも感じています。民間では工事費との戦いであり、言い過ぎかと思いますが行政側は責任回避の戦いです。
また、話が少しそれますが、技術規準は完成後の荷重にて設計を行いますが、工事途中の荷重における検討を忘れがちと常々思っています。
職責については、構造技術者を取り巻く環境においても明快ではない現実があります。それは、建築士事務所の開設者と管理建築士とのあり方、それらの者を雇用している法人の代表者のあり方です。
そして、設計監理契約は管理建築士の署名が無ければできないのか。施主と施工者が結託して監理者の指示に従わないで工事を行った場合は行政側に報告をするのか、そしてそれを放置した場合責任はどうなるのか等、設計監理業法の確立が望まれます。
14.山口昭一 様・(株)東京建築研究所 会長
星さんの主張(第2弾)を読んでご返事を書きたくなりました。
ご指摘の様に問題は多種多様でいくら時間があっても充分とはいかないのですが、少しずつでもこの際整理することは、大変重要な意義があります。まず、この問題を正面から取り上げられた星さんの心に敬意をのべます。
微力ですが、私も協力したいと考えています。
ただ私は第三者性を疑われる立場にあり、やや発言を遠慮してきましたが、一人の職能人(プロフェッショナルと教えられてきました)として控えるべきではないと決心がつきました。
この事故で最も責任が重いのは、発注者と私は断定しています。
発注担当者は本来なら心得えるべき技術についての基本事項を無視したと私は見るからです。要するに素人が玄人になりすましてことを平気で運んでいます。ただこの玄人、素人の判別は玄人にしか出来ません。設計者はこの場合玄人ですので、素人を説得しなければならない立場です。
この事件について、具体的に云うなら槇さん、渡邊さんは玄人中の玄人と自他認める方でしょう。その方が何で安易に自らの責務を放棄したのでしょう。社会的環境の不備(設計者を職能人として処遇しない)は現実に存在しますが、少なくともそれを破る努力の跡が見えないのが大変残念です。
私の主張の大部分はここにあります。技術的なことを軽く見るのではないのですが、技術を語る前提にこのような考え方(哲学)がいります。
これに関連して、星さんのレポートの「3.鉄骨溶接部の欠陥」について、私の見解はつぎの様になります。
溶接部は欠陥を起こし易く、設計でのこれに対する配慮は重要です。施工の欠陥を完全に防止することは不可能といえます。そのため、設計図書では施工性を考え条件を明示する、施工後に外形、超音波、X線などを使った検査により確認するのが一般的です。これらの施工条件や検査の手法とか部位、箇所数、合否の判定など設計者は設計図書に明示しなければならないのです。
監理は設計図書に忠実であることを確認する業務と建築士法では定義しています。ですから設計図書が間違いないことで監理業務が成り立つのです。溶接の怖さを最もよく知っていなければならないのは、設計者でしょう。壊れた後になって、溶接部の欠陥を問題にする前に、設計者の対応に何が不足したかを探るべきだと考えます。
いま構造技術者の置かれている社会的立場が脆弱としか言えないのも事実ですが、これを正すのは技術者しかありません。弱い立場だから、仕方がないではすまされない筈です。
また続きを書きます。反論は大歓迎です。無心になってやりましょう。
15.山崎賢治 様・JSCA会員
1.はじめに
私は、構造設計一筋35年余りになります。
構造設計について、日頃思っていることを先ず述べます。
<構造設計の現状>
地震、台風、雪、洪水等々の自然現象に対応出来る技術力、知識を求められるのに、社会的評価、知名度は極めて低い。又、設計報酬たるや信じられない安さである。従って、事務所を経営する者にとって質より量にならざるを得ない。
更に、予期しない地震、台風が発生する毎に設計法が変わり、又、新しい材料が次々と出て設計に盛り込む必要があります。この仕事に従事する以上絶えず前進するしかありません。休止は出来ないのです。設計本来の創造の世界からどんどんかけ離れて来ています。
<構造設計の将来>
現状を具体的に言えば、
1. |
過激な業務とそれに見合わない報酬。 |
2. |
設計期間が短いため、ベテランが絶えずメインにならないとミスが出る。若手が育たない。 |
3. |
社会をリードすべき学校教育が全く出遅れている。彼らを採用しても教育する時間がない。 |
4. |
国、建築学会、JSCAが社会に向けて、地震大国である我国の構造設計の重要性を何らPRしていない。 |
等々を考えると、何ら魅力のある仕事ではなくなりました。このままだと構造設計者を目指す若者は居なくなると悲観的に見ています。
2.落下事故について思うこと
ホームページで見た報告書と、新聞、雑誌の情報しかありませんが、疑問に思うことが何点かあります。
報告書では実施設計は間違いは無く正しいからスタートしています。しかし、私は事故の原因を計画設計の段階からスタートして欲しいのです。何故なら計画の善し悪しで80%以上の構造性能が決まります。その後の実施設計でいくら頑張っても取り返しは出来ません。
<疑問点>
1. |
計画設計は、誰が行ったのでしょうか?
実施設計者は計画時点でどのように係わったのでしょうか?
|
2. |
ブリッジは、土木の橋梁の範疇になりますが、計画、実施設計者共経験は十分だったのでしょうか? |
3. |
200m離れた2つの建物と一体化しないと成り立たないブリッジは、構造的に問題なかったのでしょうか? |
|
(a) |
地震時のブリッジと建物の水平変形は問題ないですか? |
|
(b) |
温度差によるブリッジと建物の膨張、収縮量の差は問題ないですか? |
|
(c) |
将来建物側を改修、取り壊しする場合のブリッジの構造対策は考慮してありますか? |
4. |
土木の橋梁は、現場溶接は用いません。何故応力の過大な弦材を現場溶接したのでしょうか?
溶接熱による材のひずみ、応力の対策はどうしたのでしょうか? |
5. |
施工性を十分考慮した設計になっていたのでしょうか?
又、一般の建物にも特記仕様書があるように、今回のような特殊構造の場合は、設計者側から施工者側に設計の主旨、施工要領、手順、管理方法等を指定しておく特記仕様書が設計図書として必要であったと思います。 |
今回は資料がない状態で勝手なことを申し上げて申し訳ありません。
私自身に設計依頼された場合を思い疑問を上げて見ました。私が間違っていたら教えて下さい。
また、このブリッジの図面が掲載されている本があれば教えて下さい。
16.匿名希望・東北の橋梁技術者
橋梁の設計に携わっている建設コンサルタントをしているものです。官公庁には、弱い立場ですので匿名とさせて下さい。
落橋時より関心をもって経過を見守っておりました。当初は、新潟県のホームページのみの情報を見ておりましたが、その後、雑誌「橋梁&都市PROJECT」、黒沢建設のホームページ、このページ等を見ながら全体がようやく理解できたような気がします。
1.事故を知った当初の感想
2.ホームページで構造体を見ての感想
(1) |
斜材位置がR19側とR27側でどうしてこんなに非対称なの?
|
(2) |
こんな横剛性(ねじり剛性)のない構造で、左右の主構で引っ張り部材の斜材配置が違った構造が成り立つの?
|
(3) |
上記の印象から張力調整がまずかったこととねじれから、斜材のないパネルや中央付近のパネルなど数パネルにわたって正曲げが発生し、トラスではなくフレーム構造になったため上弦材が曲げ破壊したんではないかと、直感的に判断しました。 |
(4) |
また、国道に同タイプの歩道橋があり、その支間の中間をベントで受けて補強した写真を見て、なんと言うことをするんだ、壊したいのかと思ったものでした。 |
(5) |
その後の、丸山委員会の要旨などを読んで、ロッド定着部の耐力不足に非常にこだわったり、専門家であれば、せん断力や局部的な応力計算など当たらずしも遠からず程度ものであることなど承知のはずであるのに計算で求めた耐力を重視しているなど違和感を感じるものでした。
|
(6) |
ただ、このような事故や情報がホームページで公開されるようになったんだということには少し感激しておりました。 |
3.現在の感想
(1) |
丸山委員会のロッド定着部の耐力不足説は、耐力算定計算手法が専門家らしくない。また実験を自ら行わないで、直接の受注企業の非公開実験の結果をその裏づけとしているのは、調査委員会としては失格ではないか。
|
(2) |
1スパンを除いて施工しジャッキダウンしたことは、本構造に対する致命的な第1撃であったことは明白である。これを行わせたもの、行ったものが、事故の引き金を引いたものとしては第一の責任者であろう。 |
(3) |
丸山委員会の構造解析は信憑性が薄い。黒沢建設の構造系が成り立つのかという質問に答えていない。中間の支保工で荷重を受けた状態でどのような変位での解析なのかが明らかでない(私の見落としかも知れませんが)。 |
(4) |
復旧のための上弦材の溶接は、気象条件の問題が非常に大きい。これを含め、丸山委員会は、鋼部材に対する検証を放棄しているように見られる。そもそも複合構造であることから、委員会に鋼構造の専門家を加えないのは、委員会が能力不足と言われても当然である。これに対して、黒沢建設のホームページでの主張は非常にわかりやすく、実験も含めて納得できる。 |
(5) |
本橋梁の構造設計に関してねじり剛性がない。交番荷重に対して抵抗できない(群集荷重の偏載や地震荷重により生じる恐れ)左右および橋軸方向に間して斜材配置がアンバランス以上の点で、橋梁構造屋としては、本構造の設計には納得できないものがあります。施工が正しく行われていたとしても安全な構造物であったのかという疑問は残ります。 |
(6) |
発注者の責任や発注システムの問題については、言うまでもないと思います。
|
きちんとまとめてみようと思いましたが、資料の読み不足で中途半端な感想になってしまいました。星さんのこの論文(記事)は大変わかりやすく私の頭を整理するうえで参考になりました。ありがとうございました。
朱鷺メッセ連絡橋落下事故に関するドキュメント本「隠された牙 〜朱鷺メッセ事件簿〜」が出版されました。
ここは皆様方の投稿文の欄ですが、今後このドキュメント本は、落下事故を語る上で無視できない資料の一つとなるでしょうから、ここにその履歴を刻む目的で、この欄に挿入しました。
本書に対する詳しい紹介は、次のアドレスで示していますので参考にして下さい。
http://www.kozosoft.co.jp/tokimesse/kanren_tokimesse.html#4 |