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■地震動応答解析のおはなし
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第26話 「振動解析は剛性が命」


中沢: 「地盤については、少しわかってきましたので、今度は建物の剛性をどうとらえればいいか教えて下さい。」
島課長: 「以前に弾性剛性の範囲内でのモデル化と挙動について話しをしたが覚えているかね?」
中沢: 「はい、弾性剛性の範囲内の振動に関しては、串だんご系にモデル化しても、等価な結果になるということでしたね。」
島課長: 「そう。もう少し厳密に言うなら、柱梁の部材レベルで振動解析したときの各層の時刻歴水平変位の結果と、串だんご系にモデル化したときの時刻歴水平変位は、同じ値になると言うことだったね。」
中沢: 「そうですね。あの時はショックでしたね。まさか、串ダンゴにモデル化した値がまともに解析した値と同じとは思ってもいませんでしたから。」
島課長: 「この場合は、串だんごにモデル化したというよりは、数学的に処理されたものと言った方が誤解がないかもしれないね。」
中沢: 「この時の剛性評価は、縮合した弾性剛性マトリックスを使用しているわけですよね。」
島課長: 「そう、よく覚えていたね。剛性は、柱梁で構成される立体モデルをそのまま各層の水平変位成分の自由度のみに縮合しただけなので、完全に等価なものなんだ。」
中沢: 「動的な解析をするときには、この縮合した弾性剛性マトリックスが大きな位置付けになってきますが、このマトリックスはどうすれば得られますか?」
島課長: 「これは、電卓をたたいて得られるデータではないんだ。構造計算するソフトが自動的に出力してくれるものだね。例えば、BUILD.一貫IV+(一次設計・二次設計の一連計算プログラム)やBUILD.DD1(静的弾塑性解析プログラム)は、この縮合弾性剛性マトリックスをファイルに出力するので、手入力せずに、BUILD.DD2000(振動動解析プログラム)へ自動データリンクが出来るんだ。」
中沢: 「一次設計ソフトにそのような機能が組み込まれていたとは知りませんでしたね。」
島課長: 「一次設計ソフトのデータ入力時には、柱梁はもちろん、詳細なデータが入力される。それより建物全体の剛性マトリックスが組み立てられ、応力解析が行われているわけだ。この、全体剛性マトリックスをリダクションすると縮合された弾性剛性マトリックスが得られるから、当然必要な機能のひとつだね。」
中沢: 「リダクションとは、以前話した(第10話)未知数を1つづつ消去する行為をいうんですね。」
島課長: 「そういうことだ。」
中沢: 「そうすると、建物の弾性振動解析する分には、ほとんどのデータは自動処理されますから、容易に計算できるわけですね。」
島課長: 「容易も容易。地震波を入力すればいいわけだからね。」
中沢: 「地震波形も建築センターより購入したものが十数波ありますので、それを考えると一次設計のデータがあれば、保有水平耐力の計算より簡単ということになりますか?」
島課長: 「データ量からいっても弾性振動解析の方が楽ではあるね。だから、計算するだけなら慣れてしまえば簡単なんだ。ところがやはり奥が深いってことは言えるね。」
中沢: 「話しを聞けば聞くほど、いつも奥が深いと感じますが、弾性振動解析のように、島課長が簡単に話すと、意外とその気になってしまいますね。」
島課長: 「そうかね。いづれにしてもその底流にある基本的な精神をしっかり理解していればよいわけだけどね。」
中沢: 「島課長!その辺の言葉が我々初心者には難しいですよね。なにかあるんでしょうか?」
島課長: 「そうだね。一次設計の柱の剛性評価と弾性振動解析するときの剛性評価とは、少し異なるってことは知っているかね。」
中沢: 「えっ!剛性評価が異なるんですか?」
島課長: 「振動解析は剛性が命なんだ。だから実情にあわせて忠実にモデル化する必要があるんだ。」
中沢: 「どうも、まだ理解するにいたっていません。もう少し具体的に教えてくれませんか?」
島課長: 「例えば柱梁接合部のパネルゾーンの剛性を考慮するか、又は接合部を剛域にモデル化するかで、結果にも影響してくるんだ。」
中沢: 「このパネルゾーンの剛性評価は、S造についてのことですね。」
島課長: 「いや、RC造もSRC造も関係するね。特に中沢君の言うようにS造において、柱にH形鋼を使用した場合には誤差が大きく、パネルゾーンを考慮した場合と考慮しない場合とでは剛性が2倍も違ったケースもあると聞いているね。」
中沢: 「そんなにあるんですか?」
島課長: 「また、パネルゾーンだけではなく柱や梁の断面2次モーメントにも注意が必要だね。」
中沢: 「えっ!柱、梁の断面2次モーメントですか?それは、RC断面によって算出されますよね。」
島課長: 「ところが、SRC造や高層RC造のように高層な建物においては、鉄骨や鉄筋の影響を考慮して、弾性剛性を計算する必要があるんだ。」
中沢: 「RC断面のみに対して算出した場合と、どのくらい違うのですか?」
島課長: 「断面2次モーメントで2割前後ぐらい大きくなるね。また応答値に関しては、実際に計算し、体で覚えておくことが大事だね。これによって、剛性の影響が顕著に現れる構造は、どのような場合かがわかるようになれば、言うことなしってとこだ。」
中沢: 「そうすると、そのような剛性評価をしてくれるソフトがあると、簡単にシミュレーションできますが、ソフトで言うとどうなりますか?」
島課長: 「一次設計のBUILD.一貫IV+は通常の剛性評価をしたものを縮合しているね。また、静的弾塑性解析のBUILD.DD1は、弾性時においてもパネルゾーンの剛性評価や鉄骨や鉄筋の影響を考慮した剛性を扱えるので、これらのソフトにより、どちらの結果も導くことができるね。」
中沢: BUILD.一貫IV+のデータをBUILD.DD1へリンクできますか?」
島課長: 「データリンクは完全にできるので、BUILD.一貫IV+のデータがあればどちらも検討できるね。」
中沢: 「よくわかりました。ところで島課長!まだはっきりしていないことがあります。」
島課長: 「なんだね。」
中沢: 「それは、一次設計の剛性評価は一般的に行われていることで、何ゆえその評価では問題が残るのか?ってことです。」
島課長: 「中沢君は、この疑問についてどう考えるかね。」
中沢: 「そうですねェー?恐らくはこんなことでしょうか。静的な解析は一回の解析、一方動的解析は何百回から数千回の解析をするため誤差が溜まりやすい。よってモデル化の精度をできる限りあげた計算をしなければいけないってことですか?」
島課長: 「なかなかいい事を言うね。正解ではあるが、さらにもっと大事なことがあるんだ。」
中沢: 「さらにもっと大事なこと?」
島課長: 「一次設計では、外力(地震時層せん断力)の大きさが、既に決まっており、一方振動解析は、外力の大きさを調べるためにやるってことなんだ。」
中沢: 「はい・・・??」
島課長: 「すなわち、一次設計では、あらかじめ想定した外力を建物に作用する。そして、この外力は建物の柱のせん断力となって抵抗するわけだ。」
中沢: 「そのせん断力は、剛性の扱いが異なれば、各柱のせん断力の分配が少しづつ違ってきますね。」
島課長: 「ところが、剛性の評価が若干異なっても、せん断力が逃げてなくなるわけではないんだ。必ず外力とつりあうはずだから、他の柱に移動しただけで、層せん断力としては変わらない。むしろ外力の大きさの方に安全側の設定がされているため、若干の剛性評価の違いによる応力の変化は許容範囲内、という考え方だね。」
中沢: 「なるほど、外力の大きさを知りたいわけですね・・・。」
島課長: 「そう。そこで剛性の評価が異なれば、建物の固有周期も違ってきて、建物に作用する力も増減してしまうんだ。」
中沢: 「なるほど、一次設計のときはせん断力は消えたりしないが、振動解析の場合は、せん断力の一部が消えたり、又は大きく見積ったりしてしまうことがあるわけですね。」
島課長: 「そういうことなんだ。そこで振動解析する場合の剛性評価は、実状にあった適切なモデル化を忠実に行う必要があるんだ。これにより精度の高い結果が導き出されるわけだね。」
中沢: 「振動解析は剛性が命。よくわかりました。」
(星 睦廣)


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