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■連載コラム(1)


「構造計算書偽装事件の社会的背景と耐震性能のほんと!」
〜21世紀にふさわしい耐震性能のマンションとは?〜


1.「大地震時に建物を守れない!」という意外な話

 地震国である日本の建築構造技術は世界一と言われます。それゆえほとんどの方は、地震が起きても建物は安全であると思っています。この「安全だ!」という認識は実態と大きな隔たりがあり、基本的なことを明らかにすることから話を始めます。

 建築関係者は「大地震でも大丈夫」と言いますが、一般の人はこの言葉に対して「生命も財産も大丈夫である」と解釈しているに違いありません。この基本的なところが大きく違っているのです。

 建築関係者が「大丈夫」といっているのは、「命は大丈夫、命だけは守りますよ」というものです。ここに「建物に損傷は発生しません」と言う「財産も大丈夫」という意味は含まれていません。「建物に押しつぶされて、人が圧死するようなことはない」という意味です。

 もう少し正確に述べると「建物に大きな損傷がはいり、柱が破損して主要構造部(柱・梁・壁)が大破して、補修するより建て直したほうが良いという状態になっても、天井や上階の床が落ちて人を圧死させなければ、建築基準法上においては許容される耐震性能の範囲」なのです。

 このように法
においては建物という資産を守るところには至ってないばかりか、大地震時に大破したため建て直しとなった場合、その建物を取り壊す費用の発生により負の資産に変わってしまうこともあります。
※ 法: 建築基準法・同施行令・告示を総称して、以後「法」と呼称します。

 もし皆さんが、このことについて「え〜!圧死をさせないというのは当然として、建物は守れないの!」と驚きの言葉を発するとしたら、このような基本的なことを正しく伝えていない社会的背景に何か問題が潜んでいると言えそうです。

 このことで「財産を守れないような建築基準法はとんでもない」と思うかもしれませんが、そのような問題ではありません。法は「人命を守るための」最低限の耐震性能を明示し、さらに高い耐震性能を望むならそれは民・民の問題としています。すなわち民・民(マンション購入者と販売業者)が互いの合意のもとで(時には契約書に盛り込んで)建物の性能を決めることと位置づけています。
 ところが民・民は耐震性能について知る環境になく、また正しく理解できる形での情報発信もありません。この問題について、一つづつ解きほぐしていきます。


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