株式会社 構造ソフト

製品情報ダウンロードサポート技術情報会社情報サイトマップ


■連載コラム(2)


「構造計算書偽装事件の社会的背景と耐震性能のほんと!」
〜21世紀にふさわしい耐震性能のマンションとは?〜


2. 阪神淡路大震災におけるマンション被害と自己責任

 私たちは11年前に阪神淡路大震災を経験しています。そのときは連日の報道で、かなり詳細にその実態についてテレビを通して見たはずです。しかし、意外と正確に建物の耐震性能について把握したことになっていません。
 例えば、約6,500名の死亡者のうち圧死は80%です。さらに焼死が10%であることから、地震発生直後に90%の方が建物に関係して亡くなっているという事実があります。

 この死亡状況から今後の対策を考えたとき、地震が発生してどのくらいの時間で救助体制が確立できるかという問題でなく、地震発生後の数分以内での(圧死という)出来事である以上、建物をより丈夫にしない限り死亡者を減らす対策にはならないという問題です。

 一戸建て住宅の被害は甚大ですが、低層から中・高層までの集合住宅(アパート・マンション等)において、全壊もしくは大破した棟数は10,000棟
にのぼっています。
※ 10,000棟: 平成7年兵庫県南部地震被害調査最終報告書,建設省建築研究所(1996)より

 あるマンション住民は、新築マンションを購入後、一年も経たないうちにこの大震災に遭遇しました。マンションは大破したため修復することがかなわず、さらに新しく建替えて、大破したマンションと地震後に新築したマンションの2重のローンを背負うことになりました。
このように、地震で被害をこうむっても自己責任でそれを乗り越えないといけなかったわけで、このような事例が少なくありませんでした。

 このような被害に対して、(社)日本建築学会は、「耐震性能は想定していた通り、(まともに地震を受けた建物は大破し、それ以外は軽微な損傷で)本来の性能を発揮した」ということで、当時の計算基準は現在でも継続使用されています。

 この発表に対して、構造技術者と一般の人の受け止め方にギャップがありました。
構造技術者は「大地震をまともに受けた建物はそれ相応の損壊があり、常日頃のコンピュータによる解析結果と大差ない被害状況であった」と思ったはずで、建築学会の発表もうなづけるものでした。一方、一般の方は「日本の耐震技術は高く、この地震を経験しても特に変更する必要がないほど、日本の耐震技術は完璧なんだ! 安心していいのだ。」と受け止めたわけです。
  
 「大地震に対して正しく伝えると混乱や不安が起こるため、その辺は曖昧に伝えた方がよい。」との考えも当然あるでしょう。しかし、最近は情報の開示の方向にあり、行政庁はハザードマップ(災害時の危険地帯)を開示しています。(地震・洪水・津波等のハザードマップ)
 
 昔であれば、地価の値段が下がる影響を心配して業界の反発が出たり、市民が不安になるとのことで開示をしていなかったわけです。ところが最近は、「災害時に生命や財産に問題が起こっても、それは自己責任ですよ」ということを示すためにも開示の方向にあるようです。

 今回の構造計算書偽装事件においても、確認検査機関のチェックがうまく働かなかったゆえ、国の責任も少しあるとしながらも、マンション購入者の金額負担も大きく、国は基本的には自己責任であることを示しています。

 このように生命と財産は例え天災でも自己責任で守らなければならないため、「耐震性能について知らなかった」で済まない話で、住民は正しく知る権利があり、また正確な情報を聞きだしておく必要があると言えます。


[1.へ] [2.] [3.へ]

[連載コラム「構造計算書偽装事件の社会的背景と耐震性能のほんと!」へ戻る] 



トップページへ
トップページへ

Copyright (C) KozoSoft Co.,LTD All rights reserved.